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留学生が内定を得たら?卒業までに必要なビザ変更手続と流れを行政書士が解説
外国人留学生が日本で就職する際には、「留学ビザ」から就労可能な在留資格、多くの場合「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国」と略称)ビザへと切り替える必要があります。内定が決まった喜びも束の間、ビザ申請の準備が間に合わず入社時期が遅れたり、最悪の場合、就労が認められないといったトラブルも少なくありません。
本記事では、外国人留学生の皆様が内定を得てから卒業し、スムーズに入社を迎えるために必要な準備、申請時期のポイント、そして注意すべき点を、出入国在留管理庁の公表情報や実務経験豊富な行政書士の視点から、より深く、わかりやすく解説します。
内定後の手続きと「留学」ビザの限界
「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更
「技術・人文知識・国際業務」(技人国)とは?
対象となる職種例
⚠️ 要注意: 販売職・接客業の取り扱い
「学歴・専攻」と「職務内容」の関連性
入管はどのように関連性を審査するか
申請手続きの時期について
よくあるトラブルと回避策
もう一つの選択肢:「特定活動」ビザの活用
卒業後の就職活動のための「特定活動」(継続就職活動)
内定後から入社までの待機期間のための「特定活動」(採用内定者)
まとめ:早期準備と専門家の活用が成功の鍵
内定後の手続きと「留学」ビザの限界
日本企業から内定を得た外国人留学生は、卒業前から就職に向けた様々な手続きを開始する必要があります。ここで最も重要なのが在留資格の変更です。「留学ビザのまま就職できるのでは?」という誤解も一部で見受けられますが、学校を卒業した後は、必ず就労可能な在留資格への変更手続きが必須となります 。
たとえ「留学」ビザの有効期間が卒業後も残っていたとしても、その在留資格は学業を目的とするものであり、資格外活動の条件違反となります。
さらに、フルタイムの就労活動は認められていません。 その違反があれば、「専従資格外活動違反」とされることがあります。
つまり、卒業していることで学業をすることはなくなるため、アルバイト、つまり資格外活動を「専ら」している留学生という評価を入管から受けた場合、退去強制事由に該当します。
「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更
「技術・人文知識・国際業務」(技人国)とは?
日本の就労ビザには複数の種類がありますが、留学生が大学や専門学校で習得した専門知識や技術を活かす一般的な職種(文系・理系問わず)に就く場合、最も多く利用されるのが「技術・人文知識・国際業務」の在留資格です 。
対象となる職種例
「技人国」ビザが認められる具体的な職種の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 営業職、事務職(経理、人事、総務など)
- マーケティング、企画、コンサルタント
- 通訳、翻訳、語学指導
- ITエンジニア(システム開発、プログラマー、ネットワークエンジニアなど)
- 設計、技術開発(機械、電気、建築など)
- 貿易関連業務
⚠️ 要注意: 販売職・接客業の取り扱い
原則として、店舗での単純な販売業務や飲食店等での接客業務のみを主たる職務内容とする場合は、「技人国」ビザの対象とはなりません。これらの業務は、一般的に専門的な知識や技術を必要としない「単純労働」と見なされるためです。
ただし、例外的に認められるケースも存在します。例えば、
- 研修の一環である場合: 将来的に専門職(例:店舗マネージャー、商品開発担当)に就くためのキャリアパスの一環として、入社初期に一定期間、販売・接客業務を経験する場合。ただし、その研修内容、期間、目的が合理的であり、日本人新入社員も同様の研修を受けるなど、明確な計画が必要です 。
重要なのは、業務が「技人国」ビザの趣旨に合致し、申請者の学術的素養や専門性が活かされるかどうかという点です。
「学歴・専攻」と「職務内容」の関連性
「技人国」ビザの申請において、最も厳しく審査されるのが、申請者の学歴(大学や専門学校での専攻分野)と、就職先で従事する具体的な職務内容との間に関連性があるかという点です 。
入管はどのように関連性を審査するか
出入国在留管理局(以下、入管)は、主に以下の書類を基に関連性を審査します。
- 申請者提出書類: 卒業証明書、成績証明書、履歴書など
- 企業提出書類: 職務内容を詳細に記述した書類(「職務内容説明書」「採用理由書」など)
専攻分野の名称と職種名が完全に一致する必要はありませんが、大学等で学んだ知識や技術が、具体的な業務においてどのように活かされるのかを合理的に説明できることが求められます。
申請手続きの時期について
最適な申請時期:誤解を解き、正しいタイミングを把握する
在留資格変更許可申請のタイミングは、入社日に間に合わせるために極めて重要です。
- 3月卒業・4月1日入社の場合: 多くの留学生がこのケースに該当しますが、申請受付は前年の12月1日から開始されるのが通例です。この時期に申請することで、4月1日の入社に間に合う可能性が高まります。
- 元々の原稿にあった「卒業の1か月前」や「2月中~3月上旬」の申請では、特に近年の申請件数の増加と審査の混雑を考慮すると、4月1日の入社に間に合わないリスクが非常に高いです。
- 秋卒業の場合(例:9月卒業・10月入社): こちらも同様に、卒業・入社時期から逆算し、余裕をもって申請する必要があります。一般的には入社日の1~2ヶ月前と言われますが、管轄の入管の混雑状況にもよるため、早めの準備と申請が推奨されます 。
よくあるトラブルと回避策
学歴と職務内容の不一致
これは不許可理由として最も多いものの一つです。詳細は前述の「最重要ポイント:「学歴・専攻」と「職務内容」の関連性」の項を再度ご確認ください。企業作成の「職務内容説明書」や「採用理由書」の丁寧な作成が不可欠です。
内定取り消し後も就職予定として申請していた
万が一、内定が取り消されたにもかかわらず、その企業に就職する前提で申請を継続していた場合、虚偽申請にあたる可能性があります。速やかに申請を取り下げ、状況に応じて後述の「特定活動(就職活動)」ビザへの切り替えなどを検討する必要があります。
卒業後に在留期間が切れそうになったら?:「特例期間」について
「留学」ビザの在留期限内に「技人国」ビザへの変更申請を提出していれば、審査結果が出るまで、または元の在留期間満了日から2ヶ月を経過する日のいずれか早い日まで、適法に日本に滞在することが可能です 。これを「特例期間」と呼びます。
もう一つの選択肢:「特定活動」ビザの活用
卒業までに内定が得られなかった場合や、内定は得たものの入社日までに期間がある場合など、状況に応じて「特定活動」ビザを利用できる可能性があります。
目的と対象者: 日本の大学(大学院、短期大学、高等専門学校を含む)または専門学校(専門士・高度専門士の称号を取得し、専攻内容が就労系ビザと関連する場合)を卒業した留学生が、卒業後も引き続き日本で就職活動を行うための在留資格です 。海外の大学を卒業後、一定の要件を満たす日本の日本語学校を卒業した者も対象となる場合があります。重要な条件として、卒業前から継続して就職活動を行っていることが必要です 。
在留期間と更新: 通常、最初の在留期間として6ヶ月が付与され、1回の更新(さらに6ヶ月)が可能です。これにより、最長で1年間、卒業後も日本で就職活動を継続できます 。
主な必要書類:
- 在留資格変更許可申請書、写真、パスポート、在留カード
- 卒業証明書(または卒業見込証明書)
- 出身大学・専門学校等からの推薦状
- 継続的な就職活動を証明する資料(応募記録、面接通知など)
- 滞在中の経費支弁能力を証明する資料
「特定活動」中のアルバイト(資格外活動許可): 別途「資格外活動許可」を取得すれば、原則として週28時間以内のアルバイトが可能です 。
目的と対象者・条件: 日本の教育機関を卒業(または「留学」や「特定活動(継続就職活動)」で在留中)し、企業から内定を得たものの、卒業日や現有ビザの期限と実際の入社日との間に空白期間が生じる場合に、入社までの待機期間として日本に滞在するための在留資格です 。 主な条件は以下の通りです 。
- 内定後1年以内、かつ卒業後1年6ヶ月以内に入社予定であること。
- 内定先の職務内容が「技人国」などの就労ビザの対象となる見込みがあること。
- 申請者の在留状況に問題がないこと。
- 内定先企業が、申請者と定期的に連絡を取り、内定取り消しの場合は入管に報告する旨の誓約をすること。
在留期間: 入社日までの期間(ただし、卒業後1年6ヶ月以内)が認められます。
「特定活動」中のアルバイト(資格外活動許可): 別途「資格外活動許可」を取得すれば、原則として週28時間以内のアルバイトが可能です 。
まとめ:早期準備と専門家の活用が成功の鍵
外国人留学生が内定を得て日本で就労するためには、「内定=すぐに働ける」のではなく、法務省令に則った「在留資格の変更」という重要なステップが不可欠です。本記事で解説したように、その手続きは多岐にわたり、特に申請時期の遅れ、学歴・専攻と職務内容の関連性の不明確さ、企業側の提出書類の不備などは、入社時期の遅延や最悪の場合不許可といった重大なリスクに繋がります。
このような複雑な手続きや個別の状況判断が求められる場面では、出入国管理業務を専門とする行政書士に相談することが、スムーズで確実なビザ取得への近道となります。